轻松读懂日语经典作品
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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页
蛻脱の殻
「君はどこのもんだ」
再び訊ねると、若者はモグモグと口を動かして、幽に答えた。
「相川守っていうんです。……赤蠍にやられたんです」
「エッ? じゃあんたは、あの相川操一さんの、……」
「そうです。……珠子の兄です」
立並ぶ人々は、それを聞くと、ハッとして思わず目と目を見合わないではいられなかった。
相川珠子と云えば、殺人鬼「赤い蠍」の第二の犠牲者として、無残にもその死体を銀座街頭に曝された娘さんではなかったか。今日又、その兄さんが、怪犯人の紋章と云われる、赤い蠍の衣裳を着せられて、丸の内の真中に行き倒れていようとは。
「詳しいことはあとで聞きます。兎も角、あなたのお宅へ電話をかけて、この事をお知らせしましょう」
警官はひどく緊張した面持で、小使を案内に立てて、電話を借りる為に、Sビルディングの中へ駈け込んで行った。
蛻脱の殻
同じ日の午前十時頃、四谷の桜井品子の家には、又別の椿事が突発していた。
品子を初め桜井家の人達は、その朝の丸の内の怪事件をまだ耳にしていなかった。又前夜同家の庭園内で行われた相川青年と曲者との挌闘のことも、少しも気附かないでいた。
品子は、昨夜は少しばかりいやな夢に悩まされはしたけれど、一昨夜のように、窓から覗く恐ろしいものの姿を見ないで済んだことを、喜んでいた。