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ようちゅう

妖虫

江戸川 乱歩

「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页

青空文庫

この部屋に犯人が

「ヤア、先生ですか。どうかお上り下さい。多分もう御承知でしょうが、ここのお嬢さんが、又あいつに誘拐されてしまったのです。それについて今みんなが集まって相談していた所です」

老人は三笠龍介氏であった。何の為の変装かは分らぬが、半纒姿の老探偵に相違なかった。トランクを担いでいる大男にも見覚えがある。いつか守青年を龍介氏の書斎に案内してくれた、三笠探偵事務所の豪傑書生だ。

この部屋に犯人が

「ウン、わしもそのことを小耳にはさんだので、急いでやって来たのじゃ、今丁度善後策の相談会が開かれていることも承知している。一つわしをその席へ案内して下さらんか」

守青年はそれを聞くと、ガッカリした。老探偵は賊の本拠をつくどころか、今頃になって、やっと品子さんの誘拐を聞知り、慌てて駈けつけて来たのだ。やっぱり皆の云う通り、この老いぼれは、見かけ倒しのボンクラ探偵だったのかしら。

「承知しました。桜井さんも是非御通ししてくれということでしたから」

彼はガッカリしながらも、一縷のよもやに引かされて、洋室へと先に立った。

「アア、お前はこちらへ来ちゃいけない。そこの書生部屋を拝借して、わしが呼ぶまで待っていなさい。