轻松读懂日语经典作品
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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页
雨漏りと見違う程不明瞭な、併し不明瞭な丈け、ゾッとする様な何かの形であった。
「分りました。蠍です。赤い蠍です。ホラ、春川月子が誘拐された日に、ベッドの上に置いてあったアレと、同じ毒虫の姿です」
相川青年がとうとう、その怪しい絵模様の意味を発見した。
なる程、そう云えば、蠍の形に違いない。八本の足と、二本の鋏と、鋭い尻尾とが、ちゃんと描いてある。
一人の警官が、何を思ったのか、その絵に近づいて、指で壁を撫でていたが、突然頓狂な声を立てた。
「ヤ、血だ! この蠍は人間の血で描いてあるんだ」
アア、血で描かれた「赤い蠍」。何とふさわしい犯罪者の紋章ではないか、それにしても、奴等の不敵さはどうだ。これ見よがしに、床の間の正面に、署名を残して行ったのだ。
「何か布類にでも血を含ませて描いたのだろうが、これ丈け大きな絵を描くには、大変な分量だぜ」
警官が驚いて云った。
「ウン、恐らく殺人は行われてしまったんだね」
この異様な血痕を見せつけられては、もう相川青年を疑う訳には行かなくなった。
「それから、縁側をよく調べてごらんなされば、いくら拭き取ったにしても、血の跡が残っているに違いありませんよ」