轻松读懂日语经典作品
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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页
闇を這うもの
空耳ではない。確かに息遣いの音だ。何かしら生きものが、暗闇の中に蠢いているのだ。
闇を這うもの
相川青年はこの日頃、悪夢の世界をさまよい続けて来た。春川月子の虐殺、化物屋敷の壁に描かれた血の蠍、箱の中から聞える異様な歌声、叢に生えた生腕、闇夜の曲芸団のテントから現われた青眼鏡の怪物、名探偵三笠龍介氏に化けた殺人鬼、どれもこれも、凡てこの世の出来事とは考えられなかった。そして、今この穴蔵も亦、それらの奇怪な悪夢の続きなのではあるまいか。
彼は何も見えない闇の中に、人間程の大きさの蠍を幻想した。蜘蛛の様な八本の長い足を、互違いに動かして、巨大な鋏をいからせ、鋭い毒針の尻尾を醜く歪げて、隙もあらば一飛びに襲いかかろうと身構えながら、ゴソゴソと這い寄る、真黒な怪物を、幻想した。その妖虫が、犬かなんぞの獣の様に、ハッハッと呼吸しているのだという、変てこな考えに、彼はワナワナと震え出す程の恐怖を感じた。
コンクリートらしい、冷たくてザラザラした床を、守青年は、身を縮める様にして、呼吸の音とは反対の方角へ、ジリジリといざりながら、
「シッ、シッ」
と激しく、見えぬ獣を叱りつけた。