轻松读懂日语经典作品
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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页
だが、六人の召使が邸内の隅から隅を見廻っても、怪しい人影はどこにもなかった。しかも不思議はそればかりではなかった。ゾッとした事には、目に見えぬ怪物は、その厳重な監視の中を潜って、まるで無人の境を行くが如く、座敷から座敷へと歩き廻っていたことが分って来た。
操一氏が居間に帰って見ると、机の上に投げ出してあった夕刊に、同じ赤い鉛筆でデカデカと大きな蠍が書きなぐってあった。
間もあらせず、女中部屋に、死にもの狂いの悲鳴が聞えたので、駈けつけると、その四畳半の入口の障子に、やっぱり醜い赤蠍の絵が張りつけてあった。
一方では一人の書生が、庭園の樹の枝にかけてある提灯の上を、不気味な守宮の様に這っている、本物の蠍の死骸を発見して震え上った。
悪魔は面白がっているのだ。腕白小僧の様にずば抜けたいたずらをして、どこかしら見えぬ場所から、手を叩いて笑っているのだ。
操一氏は、もう家中が殺人鬼で一杯になっている様な感じで、為す術を知らなかった。珠子も、敏感にそれと気づくと、殿村夫人の制止も聞かず、ベッドを降りてウロウロと、部屋から部屋をさまよった。逃げても隠れても、怪物が身近に寄り添っている様で、広い邸内に彼女の落ちつく場所がなかった。