轻松读懂日语经典作品
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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页
「それじゃ、あの葉巻は……」
「ちゃんと、眠り薬が仕込んであったのだよ。お嬢さん、おとなにしていらっしゃい、もうあんた一人ぽっちになってしまったんだからね。ハハハ……」
「誰です。あなたは一体誰です」
珠子は色を失った唇をワナワナ震わせて、死にもの狂いの気力で叫んだ。
「アア、なんて美しいのだろう。あんたがそうして怖がっている顔は、実にたまらないですぜ、お嬢さん」
怪人物は、ソロソロと彼女の肩へ手を廻しながら、いやらしく笑った。
珠子はもう身体がすくんで、口は乾き切って、声を出す力もなく、捉えられた美しい小鳥のように、息遣い烈しく、うち震うばかりであった。
アア、もう絶体絶命だ。
珠子は妖虫の毒手を逃れようとして、却って当の赤蠍の手中に陥ってしまったのだ。老探偵に変装していた奴が、赤蠍の一味であることは云うまでもない。その外に、運転台には二人の屈強な男が頑張っている。運転手も助手も同じ仲間なのだ。そうでなくては、偽探偵がこんな大胆な振舞をする筈がない。相手は三人だ。頼みに思う父の操一氏は麻酔に陥って死人も同然の有様。もう全く逃れる術はなくなった。
自動車はどこへ行くのか、郊外の真暗な道を、矢の様に走っていた。