轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页
言葉が途切れたかと思うと、古沼の底のような沈黙の中に、キリキリと歯ぎしりの音が聞えて来た。確かに青眼鏡の口からだ。これが癖なのであろうか、それから後にも、彼は物を云いながら、ふと言葉を切っては、歯ぎしりを噛むのであったが、その幽なきしりの音が、この怪物を一入いやらしく不気味に感じさせないではおかなかった。
「今もそこの男が云った通りだ。俺は今度はこの幽霊屋敷を舞台に極めたんだよ。珠子さん聞いているかね。この磔刑人形だ。これを十字架からおろしてね、その代りにお前さんを縛りつけてね、生身のお前さんに磔刑人形の代役を引受けて貰おうって訳なんだ。エ、なんとすばらしい思いつきじゃねえか。明日になれば何百人という見物がおしかけて来るんだ。そしてね、生身の身体とは知らねえで、本物の血のりだとは知らねえで、何とまあ美しい人形だろう。何とまあむごたらしい殺され方なんだろうと、口をあんぐり開いて、感にたえて眺めて下さろうというものだ。千両役者だぜ。ヤンヤの御喝采だぜ。エ、珠子さん、嬉しいだろうね。ゾクゾクと嬉しいだろうね。ハハハ……」
青眼鏡は我とわが言葉に感動して、さもおかしそうに、陰にこもった笑声を立てたが、ふと気がつくと、聞手の珠子は、もうさっきから、彼の云い草なぞ聞いてはいなかった。