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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
吉川英治『宮本武蔵(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 页
それは一乗寺下り松の闘いに、吉岡方の大勢に対して、身一つで当って行った時である。あの時、戦いが終ってから気づいてみると、自分は両手に剣を持っていた。――右に大剣と、左の手に小刀を。
それは、本能がしたのである。無自覚のうちに二本の手が、各※(二の字点、1-2-22)あるだけの力を出して身を護ったのである。生死の境が、必然に教えたのだ。
大軍と大軍との合戦でも、両翼の兵を完全に駆使しないで、敵に当るという兵法はあり得ない。まして一箇の体にはなおのことである。
日常生活の習性は、しらずしらず不自然を自然に思わせて、不思議ともしなくなるものである。
(二刀がほんとだ。むしろ、二刀が自然なのだ)
武蔵は、あの時以来、そう信じていた。
けれど、日常生活は日常の所作であり、生死の境は、生涯にそう何度もあるものではない。――しかも剣の極意は、その生死の要意を日常化するにある。
無意識でなく、意識あっての働き――
しかも、その意識が、無意識のように自由な働き――
二刀は、そうしたものでなければならぬ。武蔵は常にその工夫を胸に抱いていた。彼は自己の信念に、理念を加えて、動かない二刀の原理をつかもうとしていた。