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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 页

青空文庫

菅の一文字笠に夕陽がつよく反射しているため、その紐下の顔は、暗くてよく見えない。

また、それに向いあっている侍の方は、十七、八歳の痩せぎすな青年で、前髪立ちのよく似あう顔に、蘇芳染めの手拭を頬かぶりにして顎で結び、何か、うなずいては、にこにこ笑って見せているのである。

「どうです、おやじ様、漆桶の考えは、うまく行ったでございましょうが」

その前髪がいうと、おやじ様とよばれた一文字笠は、

「いや、貴さまもだいぶ、巧者になったな。さすがの大蔵も、漆桶までは気がつかなかった」

「だんだんのお仕込みでございますから」

「こいつ、皮肉なことをいう。もう四、五年も経ったら、今にこの大蔵のほうが、お前に顎で使われるようになるかもしれぬ」

「それは当然そうなりましょうな。若い者は抑えても伸び、老いゆく者は、焦心っても焦心っても老いてゆくばかりで」

「焦心っているとみえるかの。貴さまの眼から見ても」

「お気のどくですが、老先を知って、やろうとなさっているお気もちが、傷ましく見えまする」

「わしの心を観抜抜くほど、貴さまもいつの間にか、いい若い者になったものよな」

「どれ、参りましょうか」