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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
吉川英治『宮本武蔵(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 页
幾日も調べがなかった。
――がしかし、又八自身は、その一刻一刻が死へ歩み寄っているような恐怖だった。
彼は、彼ひとりで、
「あのことが、露顕したに違いない」
と、決めていた。
あのこととは、いうまでもなく、彼が奈良井の大蔵に使嗾されて機をうかがっていた「新将軍狙撃」の企み事であった。
大蔵にその決行を迫られて、井戸掘り親方の運平らの口入れで城内へはいったからには、すでに又八の胸にはいちかばちかの覚悟がついている筈であるが、又八はあれから今日に至るまで、幾度も、秀忠将軍の工事場御巡視の機会には出会っていながら、槐の木の下に埋けてあるという鉄砲を掘り出して、将軍を狙撃するなどという大それたことは、彼には出来なかったのである。
大蔵に脅迫された時は、いやといえば即座に、殺されそうだったのと、金も欲しかったので、
(やる)
と、誓ってしまったが、江戸城の中へはいってみると、たとえこのまま一生涯、井戸掘り人足で終ろうとも、将軍家を狙うなどという怖ろしいことは、自分にはできないと思い直して、大蔵との約束も努めて忘れるように、土まみれになって、他の人足たちの間に働いていたのである。