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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
吉川英治『宮本武蔵(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 页
二
心なしか、そう思って、吉野朝以前からというここの古い砦型の城を仰ぐと、四山の春は迫って来ているに関わらず、どことなくしいんとして冷寂な感がある。
「お通さま」
奥の丸の中庭に立って、ひとりの小僧が、今、彼方此方の棟を見まわしていた。
「――お通さま。どこにお在ででございますな」
すると、一つの屋の障子があいた。室の中に焚き籠められていた香の煙が、彼女と共に外へ流れた。百日の忌を過ぎてもなお、陽に会わないでいるせいか、梨の花のように白い愁いを顔に湛えている。
「持仏堂でございます」
「お。またそれへ」
「御用ですか」
「兵庫さまが、ちょっと、来て欲しいと申されまする」
「はい」
縁づたいに、また、橋廊下を越えたりして、そこから遠い兵庫の部屋へ訪ねてゆく。――兵庫は縁に腰かけていたが、
「オオ。お通どの、来てくれたか、わしの代りになって、ちょっと挨拶に出てもらいたいが」
「どなたか……お客間に?」
「先刻から通って、木村助九郎が挨拶に出ておるが、あの長談義には閉口なのだ。殊に、坊主と兵法の議論などは参るからな」
「ではいつもの、宝蔵院様でいらっしゃいますか」
二
奈良の宝蔵院と柳生ノ庄の柳生家とは、地理的な関係からも、遠くないし、槍法と刀法の上からも、因縁が浅くなかった。