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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 页

青空文庫

仄見えるのである。

それを悟ったか、兵庫は、彼の訪れにもここ二、三回、

(風邪ごこちにて)

とか、

(やむなき差しつかえで)

とかいって、避けている。

きょうも胤舜は、なかなか帰る気ぶりもなく、やがて兵庫が、席に見えるのを、何となく期待しているらしい。

木村助九郎は、察して、

「はい、最前、お伝えしておきましたゆえ、お気分さえよろしければ、ご挨拶に見えましょうが……」

と、何とつかず、いい濁していた。

「まだ、お風邪気かな?」

と、胤舜はいう。

「は、どうも……」

「平常、お弱くおられるか」

「御頑健な質でおられますが、久しく江戸表にござって、山国の冬を越されたのは、近年ないことなので、馴れぬ寒さがこたえたのかも知れませぬ」

「頑健といえば、兵庫どのが、肥後の加藤清正公に見こまれて、高禄にて聘せられた折――お孫のために故人の石舟斎様が、おもしろい条件をつけられたそうですな」

「はて。聞き及んでおりませぬが」

「拙僧も、先師胤栄から聞いたのですが、肥後殿へここの大祖がいわるるには、孫奴は、殊のほか短慮者ゆえ、御奉公を過っても、三度まで死罪のお宥しをお含みおき下さるなら、差出しましょうといわれたそうな。