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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 页

青空文庫

五

――ござるならはやくござれよ。三人四人、束となって蒐っても苦しゅうないが」

その時である。

溜の幕の陰に、笈をおろした山伏がある。身軽になって、宝蔵院衆の前に出て、

「試合は、院中のお弟子方に限りましょうか」

と訊ねた。

宝蔵院の者は、口を揃えて、然らず――と答えた。

東大寺前と、猿沢の池の畔に、高札を立ててある通り、道に志す武芸の道友とならば、何人といえど、手合せに関いはないことになっているが、往古の荒法師以上、槍修行の荒法師ぞろいと聞えている宝蔵院の野天行に当って、

(われこそ)

などと自分から人前に恥をさらし、揚句に片輪者にされて悄々引っ込むような愚かなまねを――敢て自分からすすんで求めるような馬鹿者はいないのだ、という説明であった。

山伏は、列座の法師輩に、一応の辞儀をして、

「然らば、やつがれが一つその馬鹿者となってみとうござるが、木太刀を御拝借願われましょうか」

と、いった。

五

人の輪に紛れて、彼方の野試合を眺めながら、兵庫は、

「助九郎。おもしろくなったな」

と、顧みた。

「山伏が出て来たようで」

「されば。もう勝敗は見えたも同じだの」

「南光坊が優っておりましょうか」