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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 页

青空文庫

という疑惑の下に、九度山衆の手で殺められてしまえば、これはもはや救いも交渉の余地もないことだが、聡明なる幸村父子の目にとまれば、そんな嫌疑は、立ちどころに晴れ、或は今頃、すでに自由の身になって、かえって伊織の身を、案じ探しているかも知れない。

――むしろ。ここにひとり。

身は無事でも、憂うべき運命の人がある。以上の誰をさし措いても、ひとまずそれを語るべきであろう。いうまでもなく、それはお通。武蔵あるがゆえに、生きもし、希望もし、ひたすら女の道を、女たらんとしながら、柳生の城を離れてからまた、嫁ぐ妙齢もはや過ぎかける片鴛鴦の独り身を、旅人の眼に不審られながら、むなしく旅に朽ちんとはして――いったい彼女は、この秋を、どこに武蔵の見た月を見ているのだろうか。

「お通さん、いるかの」

「はい。――おりますが、どなた様ですか」

「万兵衛じゃが」

と、その万兵衛が、蠣殻の白くついている柴垣越しに、顔を伸びあげた。

「オ。麻屋の旦那さまでいらっしゃいますか」

「いつも、ようお働きだのう。――せっかく、働いているところを、邪魔してはわるいが、ちょっと話があるで……」

「どうぞ、おはいり下さいませ。