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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
吉川英治『宮本武蔵(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 页
「でも、船路もありますもの」
「いや、恐らくは」
と、城太郎は、首を振って、
「船では行かれまい。なぜならば姫路でも岡山でも、山陽の各藩では武蔵様が通過の節はぜひ一泊を引き留めよう。そして、人物を見よう。またはそれとなく、仕官の望みがあるかないか、肚を訊こう。……などと種々な考えで、待ちうけている。現に姫路の池田家でも、沢庵坊へ御書面したり、妙心寺へ問合わせたり、また、城下口の駅伝問屋に命じて、もし武蔵らしい者が通ったらすぐ知らせよと、達してあるそうだから」
そう聞くと、お通はかえって、ああと嘆いて、
「では、なおさらです。武蔵様が、陸路を下っていらっしゃる筈はない。武蔵様のなによりもお嫌いな、そんな躁ぎが、城下城下で待ちうけているようでは――」
と、絶望していった。
十
うわさの程度でも、欣ぶであろうと、城太郎は話したのであったが、彼女にいわれてみれば、武蔵が姫路へ立ち寄るだろうなどという期待は、儚い、こっちだけの空想にすぎない。
「――では城太さん。京都の花園妙心寺へゆけば、確かなことが、知れましょうね」
「それは、知れるかもしれないが、うわさだからなあ」