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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
吉川英治『宮本武蔵(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 页
……まずまず、それへご休息を」
と、彼へも一枚の莚をすすめ、さっき浜辺では見えなかった安積八弥太を紹介わせ、
「これも、作州牢人のひとり――今では細川家の馬廻役をいたしておるもので」
と、慇懃なことは、床の間や銀襖をひかえた客間の応対と変りもなかった。
武蔵は、いよいよ、不審にたえない。
風流の趣向なのか。何かまた、人目を避けてする必要のある会合なのか。――とにかく一枚の莚に招かれても客は客であるから、武蔵は慎んで坐っていると、やがて年長者の内海孫兵衛丞が、
「あいや客人。お膝をおくずしくだされい。――そして、やがて持参の折や酒などもござるが、それは後で開くといたして、われらの会合の仕来りだけを、先へ致しておくことにいたすゆえ、長うはかからぬが、暫時それにてお待ちねがいたい」
と、いった。
そして一同、袴を割って、一緒に胡坐をくんで坐り直すと、銘々が携えて来たらしい一把の藁束を解ぐして、馬の沓を作り始めたのであった。
六
作っているのは、馬の沓であるが、それを作る藩士たちの様子は口もきかず、わき目もふらず、謹厳でありまた、おそろしく敬虔であった。
手に唾し、藁を素ごき、掌と掌を合わせて綯う力にも、何か傍目にも分る熱気がこもっていた。