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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

吉川英治『宮本武蔵(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:宮本武蔵、宮本武蔵。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 350,912 字 · 702 页

青空文庫

二

「や。ようお越し」

と、厳しい辞儀などを略して、小姓の設えた敷物へ、武将らしくあぐらをくみ、

「――聞けば伜の新蔵が、いかい御恩になったそうな。お越しを願うて、礼をいうなどは、逆礼じゃが、ゆるされい」

と、扇の先に、手を重ねて、高い頭をちょっと下げた。

「恐れ入る」

と、武蔵も、かろい会釈をして、安房守の年輩を見ると、もう前歯は三本も抜けているが、皮膚の艶は、老人ぎらいな負けん気をあらわし、少し白いのも交じってはいるが、太い口髯を、左右へ生やして、その髯がまた、歯のない唇のまわりの梅干皺を巧くかくしているのであった。

(子沢山な老人らしい。そのせいか、若い者にすぐ親しまれそうな人である)

武蔵はそう感じながら、彼もまた気軽にすぐ訊ねた。

「御子息から伺えば、私を存じおるお客が御当家に来合せておられる由。いったい誰方でござりますか?」

二

「今、お会わせする」

安房守は落着いて――

「よう其許を知っている人だ。――偶然にも、二人が二人とも、よく知っておる」

「では、客どのは、お二人とみえますな」

「どちらも、わしとは親しい友達、実はきょう御城内で出会ったのじゃ、そしてここへ立寄られて、よも山の話のうちに、新蔵が挨拶に出たことから、其許のうわさが始まった。