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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

しかし、流産するのさ」

定夫はつめたく言い放って立ち去った。

大矢捜査主任はだまって、紙キレを巨勢博士にわたした。東京都渋谷区千駄ヶ谷四ノ六二五境ツネ子(二十七)右ノ者該当者ナシと書いてある。

九月十八日夜十時ちかいころ、小田原駅ちかい富士屋という旅館へ投宿した女の宿帳の住所姓名を照会した返事である。

「皮肉な女さ。千駄ヶ谷四丁目六二五番地というあたりは、たいがい共産党員のすむ部落だそうだ。本部にもちかいんだね」

「案外共産党に関係のある女じゃありませんか。倉田定夫は熱海の元ボクサー共産党員の島田芳次の家にいたと云いましたね」

三村刑事がこう云うと、大矢警部は軽くうなずいて、

「キミ島田芳次のところへ行ってきたまえ。どうせ何も出ないだろうが、手をぬくわけにもいくまい。念入りに打ち合せてあるのだろうな。ボクサーを腕ッぷしだけと思うと、大マチガイだな」

大矢警部は背のびをして、

「さて、このウチから引越すとしよう。大掃除の結果をあつめてきてくれよ」

各組の捜査班は何ひとつ目ぼしい物を見つけだすことができなかった。ピストルも手型も出てこなかった。

第十三章 龍教信徒の密入国