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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

第十六章 容疑者総論

まことに当方は愉快です。失礼。

第十六章 容疑者総論

今日は彼岸の中日であるが、捜査本部は休まない。私たちは、昼食後でかけた。

ちょうど三村刑事が戻ったところで、その報告にもとづいて、捜査会議をひらこうというところであった。

「よいところへ来て下さいましたよ。今、電話でおよびしようと思っていたところです。では三村君の報告をききましょう」

大矢捜査主任は我々をあたたかく迎えてくれた。そして会議がひらかれた。

三村刑事はポケットからメモをとりだして語りはじめた。

「一ヶ月前ごろに、家族に会ったから近々家へ帰る、ともらしたこと、しかし、家族が病院を訪れたこともなく、手紙が来たこともなかった、という点が奇妙ですから、家族に会ったとすれば街で会ったことになる。そこで伊東と熱海のリンタク屋にきいてみましたが、彼らはたゞきまった時間に送り迎えするだけで、附き添っているわけではないから、家族に会ったのを見たことはないそうです。送り迎えの途中に、手紙を投函しなかったか訊きましたが、その事実もありません。ふだんは定期券で、伊東熱海間を往復していましたが、九月十六日は、リンタク屋に、小田原と書いた紙片を見せて、切符を買ってもらったそうです」