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ふくいんさつじんじけん
復員殺人事件
「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页
お嬢さんはカギをかけないと仰有いましたが、カギはかかっていましたし、おまけに安彦さんのお部屋のカギが投げこんでありましたよ。何か忍びこんだ気配が頭に残っておりませんか」
「そんな気配は記憶しておりません」
「お嬢さんは、帰還した安彦さんに御不審をもたれませんでしたか。どこか、ホンモノと違うような……」
「その不審はもちました。どこと云って、何一つ昔の面影がないのですもの。二つの手型を並べて考えこんだのも、そのせいでした。私、疑ったのです。カトリック大辞典の中の手型をすりかえておいた人がいるのではないだろうか、と。今でも、この疑いは、はれません。手型を盗んだ人があると知って、尚のこと疑いを深めております」
「安彦兄さんの身長を記憶しておられませんか」
「記憶しません」
「お嬢さんは銃声をききましたか」
「いいえ」
「実は、安彦さんは、復員してきたばかりではないのですよ。去年の八月には、もう帰国しておりました。伊東の温泉療養所に入院して、この家へ現れた当日まで、そこに居られたのですよ」
美津子は驚いた風がなかった。ただじっと警部を見つめている。
「どうしたのですか、お嬢さん。