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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

概して魚肉がキライで、特にオサシミ類は、フグ以外は殆ど食べません。定夫兄さんの食事は面倒で、ボクサーのせいもありますが、いつも、一人、ちがったものを食べております」

「今夜もですか」

「いつもですわ。第一、夕食はいつもオジヤです。猫舌ですから、さましてからたべています。ホーレン草のオシタシは、毎食欠かしたことがありません。茶碗ムシもかならず、たべます。お酒も、ほかの方は日本酒ですが、定夫兄さんはウイスキーとビールです。ウイスキー三杯と、ビール一本です。でも本格的なトレーニングにはいると、アルコールは一切禁止だそうです。もっとも、そのときは、ここには、おりません。東京へ泊りこんでおります。試合前は、いつも、そうです」

大矢主任は美津子をつれて食堂へ行った。食堂はもうキレイに片づいていた。

「食堂の今夜の位置は?」

「私たち三人は小さいテーブルにチリ鍋をかこんでいました。定夫兄さんは大テーブルに一人はなれていたのです。オサシミも自分の分だけ小皿にとって、食べていました」

「誰が小皿にとりわけたのですか」

「定夫兄さん自身ですわ。まだ私たちが手をつけないうちに、自分の分だけ、とりわけたのです」