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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

二つの殺人事件のうち、一つは明らかに美津子をめぐって構成されている。死者のクビにまきつけられた兇行のシゴキは美津子のものであるし、死者の部屋のカギは美津子の室内で発見された。美津子と由之と由子が催眠薬でもりつぶされており、そこにトリックのあることを暗示する「甲虫殺人事件」が美津子の部屋から発見されている。もしも美津子が死んでしまえば、美津子が犯人であるかも知れぬ、という臆測をのこして迷宮に入りかねない形勢であった。

病院から対面許可の知らせがきたのは、午後三時半、捜査本部が色めきたったのは云うまでもない。なにぶん、それまでというものは五里霧中、まったく捜査の手がかりが掴めないのだから、ムリもない。邸内では十数名の警官によって徹底的な家探しが行われている。出るわ、出るわ。いたるところからヤミ物資。しかしピストルはでてこない。

巨勢博士と私は、美津子と最も早くから接触してこの事件の発生前から首を突ッこんでいるのだから、警官も一目おいて優遇し、この対面にも立会いを許可してくれた。

口のかたい警官とちがって、素人の私に新聞記者の総攻撃が集中したのは当然で、私は病院前で車を降りると、パンパン街の百倍ぐらいのタックルにあい、時を失して、病院から締めだしをくうところであった。