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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

「けっして不和ではありません」

「奥さんの実家に住んで、家族の方との折合いはどうでした」

「義父は社長でありますし、社内で最も信任されている私ですから、肉親以上のツナガリです。こう申しては変ですが、本当のお子さん方よりも、私の方が何かにつけて深く結ばれております。したがって、他のお子さん方と私とは、ちょッと気まずいところが有ったかも知れませんが、私さえ我慢すればすむことで、表だって不和なところはありませんでした」

「奥さんに生命保険はかかっておりましたか」

「かかっておりません」

「昭和十七年でしたかな。公一さん親子が轢死されたのは」

「そう。昭和十七年一月。皇軍マレー進撃という、大変景気のよい時でした」

「あなたはアレをどう見ますか。過失死? 自殺? 他殺?」

「それは私の判断することではありませんな。しかし、すくなくとも自殺とは考えられません」

「なぜですか」

「理由がありません」

「ところが、自殺かも知れない。と述べている人があります」

「それはまア、とんでもないことを云う人間は、いつも、いるものですよ」

「倉田由之氏が、そう云っているのですよ」

「まさか!」

滝沢はチョッと舌打ちをした。