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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

「あなたの奥さんを恨んでいた人がありますか」

「恨みをうけるようなことをしていたとは思われません」

「あなたの奥さんを殺した人の心当りはありませんか」

「まったく、ございません」

「失礼ですが、あなたの奥さんと親しかった男を御存知ありませんか」

「知らぬは亭主ばかりなり、と云いますから、いたかも知れませんが、私は知りませんでした」

「親しい女友達は?」

「二三交際していた人はいますが、特に親しい友達というものもなかったようです」

「どんな性格の方でしたか」

「倉田家の娘としては、ごく平凡な方でした。さすがにチョット勝気なところはありましたが、あんまりハデなことや交際などもキライな、まア、ちょッと文学少女的でしたよ。今でも、いろいろと、私などには三行も読めないような純文学というものを読んでいました」

滝沢三次郎の訊問はこれで終った。

彼ははいってきた時と同じように愛想よく、やわらかい微笑をうかべて、一同に丁重に一礼して、出て行った。一見、まことに人づきのよい温和な紳士であった。

「あれで凄い奴ですよ。政界の黒幕などにレンラクもありましてね。今に大きなことをやらかしますぜ」