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おもいちがいものがたり
思い違い物語
山本 周五郎
「労働文化」労働文化社、1950(昭和25)年9月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,840 字 · 88 页
などという奇声をあげさせた。
仕切方というのは奉行所の中でも人数が少ない、八帖ばかりの役部屋の三方は戸納で、そこにはぎっしり書類が詰っている。同僚は三人であるが、三月と九月が決算期で、そのときは十五六人になるそうである。支配は大仲甚太夫という老人で、一日じゅう喉でうるるんうるるんといったふうな、こっちの喉が痒くなるような音をさせていた。……ほかの二人は、泰三に云わせれば「昼間のみみずく」であって、決してそれ以外のなにものでもないそうである。……初登城の日、退出してから祝宴に招かれた。招待者は野村吉太郎ら五名の若侍で、なかに白井九郎兵衛とか大仲久馬などという者がいた。
なぜかれらに招待されたかというと、かの本多孫九郎らと喧嘩をした日、泰三は満信城代の家の門前でこの野村吉太郎ら五人とも喧嘩をし、吉太郎と殴りあいをしたうえ和睦したという関係があったのである。……で、その日の招待となったのだが、場所は新柳町という処の「柳亭」という小さな料理茶屋であった。泰三は下城してそこへいって、通された座敷を眺めまわすと、
――この連中はあまり金はねえな。
こう思って腹の中で舌打ちをした。