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きょうふおう
恐怖王
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年6月~7月、9月~10月、1932(昭和7)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,038 字 · 133 页
昇降口の壁に貼られた、一枚の美しいポスターだ。
「六階催し物」
「婚礼儀式の生人形と婚礼衣裳の陳列会」
模様の様な字で、そんなことが大きく書いてある。
「夏子さん、分りました。これでしょう。あなたはこの催しものがあることを、ちゃんと新聞か何かで知っていたのでしょう」
蘭堂は未亡人の耳の側で囁いた。
「そうよ。すっかり当てられちゃった。流石は先生ね。どうお思いになって? あたしの想像は間違っているでしょうか」
夏子はニヤニヤしながら云った。
「余り突飛の様ですね。併し、相手が恐怖王のことだから、或はあなたの空想が適中するかも知れませんよ。兎も角、急いで行って見ましょう」
二人はエレベーターにのって、六階へ上った。催し物場は黒山の人だかりだ。その人ごみを分ける様にして、婚礼人形の幾場面を見て行くと、最後に三々九度の盃の場面が飾りつけてあった。
竹の柵に押し並んだ見物の頭の上から、花婿人形と花嫁人形の、美わしく着飾った胸から上が見えていた。
「あれよ。若しそうだとすれば、きっとあれよ。前へ出て見ましょうよ」
夏子は蘭堂の手をとって、見物を押し分けて行った。
婚礼の飾り物をした、広い床の間を背景に、新郎新婦、仲人、夫々の親達、待女郎などが、生けるが如く飾りつけてある。