轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

06 第六分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,320 字 · 398 页

青空文庫

そのとき、使いの者に、信長は何といったか。

(武田家におあずけしておくのは、わが家におくより気安う存じていたが、かくまで御養育の上、お送り返し賜わるとは、四郎勝頼の温情、寔に忘れ難い。この一事は、いよいよ両家の親和を永久にする楔ともなるであろう)

そういったというではないか。

その信長が。

勝頼は、敵の不信に、髪も逆立つような感情を示した。そしてこの感情の中には、自分を省みてみる余裕など微塵も失くなっていた。

だがまだまだ信長に対する彼の怒りは、遣り場があった。この騒然たる陣営に黄昏れの迫った頃、

「――先手の武田逍遥軒どの初め、一条右衛門大夫どの、武田上野介どのにいたるまで、夜来、各所の御陣地を捨て去り、いずことも知れず逃げ退かれて候う」

という報が入った。

もちろん木曾の前線からである。

「嘘だろう」

勝頼は、信じなかった。

しかし、その夜のうちに、かかることまで、すべて事実に相違ないことが、次々の飛報によって、否みようもなく証明された。

「何たること!」

勝頼は、罵った。

「木曾のごときは、疾くに亡ぶ家なるを、旭将軍以来の名門とて、父信玄がむすめまで嫁がせて、一族並に待遇して来たものではないか」