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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

05 第五分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 页

青空文庫

相州の北条家と、甲斐の武田勝頼とは、近ごろようやく和して、姻をむすび、条約を交わし、信長の力が、中国経略に消耗され尽して、やがて抜き差しならぬ羽目に陥る日を、ひそかに待っているもののようであった。

蘭丸は、馬で勢田村をすぎ、大津をこえ、三井寺の下でようやく秀吉の列に追いついた。

秀吉はそこで休息していた。――というよりも、ここまで来たところで、荒木村重の変を耳にしたので、

「なお、実相を慥めて来い」

と堀尾茂助、その他二、三の者を放って、詳細を探らせていたのであった。

蘭丸は、彼に会って、

「もう一度、お目にかかりたいとて、御主君には遽に私に命じてお後を慕わせました。急いで、安土までお戻り下さいますまいか」

と、いった。

秀吉は、即座に、

「仰せはなくても、駒を返し、諸事おさしずを仰がねばなるまいと、家来どもを、洛中まで探りにつかわしたところ。すぐ、御同道いたそう」

と、供の人数を三井寺に留め、蘭丸とただ二騎で道をあとへ引っ返した。

途中、秀吉は予想していた。村重の謀叛に対し、信長がいかに激怒しているかをである。

荒木村重が初めて信長に随身したのは、二条の館を攻撃して旧将軍義昭を駆逐したあの時からであった。