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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
05 第五分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 页
長話に疲れたのではないか」
「いえいえ先ほどから水屋へお入りになって、お湯漬の菜を手ずからお料理され、ただ今、御飯を炊いておられますゆえ、それのすみ次第、これへ罷り出てお給仕をなさいましょう」
「なに、わしのために、飯を炊いておると」
「はい」
「このひたし物や、芋の煮たのなども、半兵衛が自分の手でいたしたのか」
「左様でございます」
「……ほ。これを」
まだあたたかい小芋の一つを口に入れながら、秀吉はまたしても、涙に瞼をあつくした。
小芋の味は、舌のうえばかりでなく、身に沁みる心地がする。勿体ない――ほどな味である。
自分の召し抱えている部下とはいえ、兵においては六韜の奥義から三略の要諦にいたるまで、ことごとくこれを半兵衛に就いて教えられたといってもよい。
平時の民治経済、人間的な修養の要なども、日ごろ座間に彼から学んだことは一通りでない。いわば彼は、表面は家臣だが、内にあっては、自分の師であるものを。
「それはいかん。体にさわるといかん」
ふいに、秀吉は杯を下におき、そして酌人を置き残したまま、台所の方へ歩いて行った。
半兵衛は、そこにいた。飯器や茶碗などを自分の手で揃えていた。