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にほんばし
日本橋
泉 鏡花
「日本橋」千章館、1914(大正3)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,697 字 · 177 页
」軽く卓子台を掌で当てて、
「卑怯な、男のようでもない。」
「いや、そんな意味じゃ決してないんだ。恥を秘して貰ったようでさ。不出来をして女に振られた、恋の奴の、醜体を人目から包んでくれた気がしたから。」
「人目がどうして、そんな事ぐらい芸者が貴下、もしかそれが旦那だったら、清葉さんはどうするだろう。……ちょいと、ここへ、もしか私の男が、出刃庖丁か抜身でも持って、蒼くなって飛込んだら、私がどうすると、貴下思ってるの? いいえ、吃驚する事は無い。私だってそのくらいな覚悟はしている。
大丈夫、そうすりゃ貴下の上へ、屏風に倒れて背になって、私が突かれる、斬られて上げるわ。何の、嫉妬の刃物三昧、切尖が胸から背まで突通るもんですか。一人殺される内には貴下は助かる。両方遁げるから危いんだわ。ねえ、ちょいと、」
と、じりじりと膝で寄って来たが、目が覚めたように座をし、
「あら、何の話をしたんだろう、……ああ、そうそう。」
お孝は何気なく頷いて、
「清葉さんがお庇い遊ばして――まことに、お豪い芸者衆でいらっしゃいます。」
「まったく、私は、しかし、」
「しかしどうしたのさ。」
「姉に、姉の袖で抱かれた気がした。