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にほんばし

日本橋

泉 鏡花

「日本橋」千章館、1914(大正3)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,697 字 · 177 页

青空文庫

」

と時々刻んで呟いた阿婆が、お座敷と聞くと笑傾け、

「そらよ、お千世や、天から降ったような口が掛った。さあ、着換えて、」

直ぐに連れて出ると心得た阿婆が、他には無い、お孝の乱心にゆかしがって着ていた、その段鹿子を脱がせようと、お千世が遮る手を払って、いきなりお孝の帯に手を掛けて、かなぐり取ろうとしたのである。

「叔母さん、まあ、」

とお千世はおろおろ。……

「失礼をいたします。」と、何の事やらまた慇懃に、お孝が、清葉に手を支いたのは涙ならずや。

「これが可厭なら、よく稼いで、可い旦那を取ってな、貴女方を、」

と、清葉を頤、

「見習って幾枚でも拵えろ、そこを退かぬかい。」と突退ける。

「お待ちなさいまし。」

凜と留めて、

「切火を打って、座敷へ出ます、芸者の衣物を着せるには作法があるんです。……お素人方には分りません、手が違うと怪我をします。貴方、お控えなさいまし。――千世ちゃん、今(箱さん。)を寄越すから、着換えないでいらっしゃいよ。姉さんを気をつけて。お孝さん、」

何も知らず横を向いたお孝に、端正と手を支いて、

「さようなら。――二人で、一度あわせものをしましょうね。