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にほんばし

日本橋

泉 鏡花

「日本橋」千章館、1914(大正3)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,697 字 · 177 页

青空文庫

」と赫となる。

「おい、」

と云う語調が変って、

「しっかり答弁をせんと不可んねえ。君は、今しがた、……某大学ですかね、病院に寄宿をすると言ったではなかったか。……大学、病院の宿舎内で、雛を飾って遊ぶのですな。栄螺、蛤を供うるですな。」

「いかにも。」

「事実は、……本職が、貴下を疑うよりも、むしろ奇怪じゃないですか。」

「それが姉の志ですから。」

「御令妹は、」

「妹は縁附いて、千駄木に居るのです。」

「分りました。」

はじめてわずかに頷きながら、

「姉と云うのは、ですな。」

「それまで、そんなことまですべて言わなければならんのですか。……詮方がない、災難と思う……御都合に因っては、それはどこへでもお供をする。が、打明けてお聞かせ下さい。一体、何から起ったお疑いなんですか。」

「聞かせましょう。川へお棄てになったものを、明かにお話しが願いたい?……」

「それは、」

「ははは、やはり(栄螺と蛤)か、そいつは困りましたな。」

「お信じ下さらない。」

「強いて信じたくないとは願わんのです、紳士のために。なぜ、そんなら貴下は、その新聞包みを棄つるに際して、きょろきょろ四辺をしたり、胡乱々々往来をしたんじゃね。