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にほんばし
日本橋
泉 鏡花
「日本橋」千章館、1914(大正3)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 88,697 字 · 177 页
「お前様方でのうて、忠臣蔵がどこに有るかな。」と飴屋は頷くように頤杖を支いて言う。
「一所においでよ、皆。」
「おい。」
義士の人数、六人の同勢は、羽根のように、ぽんぽんと発奮んで出て行く。
坊主は、笠ながら会釈して、
「貴殿は大高源吾どの?」
笹を持ったのが、(気を付け。)の姿勢になった。
「ええ、そうです。」
「こなたはな。」
見向かれた、ひょろ竹は、なぜか、ごしごしと天窓を掻いた。
「僕は赤鞘の安兵衛てんです。」
「ははあ、堀部氏でおいでなさる。」
「千崎弥五郎だよ。」
矮小は唇を、もぐもぐと遣る。
「成程――その他いずれもお揃いでありますな。」
と、六人をずらりと見渡し、
「いや、これは誰方も、はじめまして御意を得ます。」
ここで更めてまた慇懃に挨拶した。小児等はきょとんとする。
中に大高源吾が、笠を覗込んで、前へ屈み、
「坊さんは誰なんです。」
「怜悧だな。何、天晴御会釈。いかさま、御姓名を承りますに、こなたから先へ氏素姓を申上げぬという作法はありませなんだ。しかし御覧の通り、木の端同然のものでありますので、別に名告りますほどの苗字とてもありませぬ。愚僧は泉岳寺の味噌摺坊主でござる。