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あんこくせい

暗黒星

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页

青空文庫

自分の娘を庇うわけじゃありませんが、どうも綾子が嘘を言っているようには思われぬ。それに、第一、あの子が、母や妹を殺すなんて、そんなばかばかしいことがあるわけはないのですからね」

伊志田氏は、ゆうべそのことが小林少年の口から漏れて以来、綾子がまるで犯人のようにあつかわれているのが、忿懣に耐えないのであった。

「いずれにしても、お嬢さんの行方を探さなければなりません。犯人がお嬢さんをどこかへ連れ去ったとすれば、一刻もぐずぐずしてはいられないわけですし、もしそうでないとしても、お嬢さんさえ探し出せば、おそらくあの荒川という不思議な青年のことも、何かわかるかもしれません。この際なにはおいても、お嬢さんの行方を突きとめるのが、第一の急務です」

「しかし、綾子がどこへ連れ去られたのか、まったく手掛りもないのですからねえ」

伊志田氏が憮然として言うと、三島刑事は気の毒な父親を力づけるように、それを打ち消した。

「いや、まだ失望なさることはありません。われわれは捜査らしい捜査はしていないのです。これからですよ。それには又いろいろ手段もあるのです。

例えばですね、犯人がお嬢さんを誘拐したとすれば、いくら夜ふけでも、まさか担いで行くわけにはいきませんから、必ず乗り物を利用しているに違いありません。