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あんこくせい
暗黒星
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页
彼は徹夜して主人の部屋を守護する役目であったが、それがまるで酒にでも酔いつぶれたように、鼾さえかいて眠っているというのは、なんとも変なことであった。
そこへ、階段に足音がして、別の書生が、交代のためにやってきたが、一と眼そのありさまを見ると、びっくりして肘掛椅子に駈け寄った。
「おい、どうしたんだ。起きたまえ。もう八時だよ」
肩を小突かれて、年長の書生は何かわけのわからないことをムニャムニャ言いながら、眼をひらいた。
「おい、しっかりしたまえ。何を寝ぼけているんだ。ゆうべは別状なかったのかい」
なおも小突きまわすと、やっと正気づいたらしく、
「おや、朝だね。いつの間に眠ったんだろう。変だなあ」
寝言のようにつぶやくのを、一方はたしなめるようにどなりつける。
「おい、君、大丈夫かい。ご主人は別状ないのか」
「変だな。頭がズキズキ痛むんだ。どうしたんだろう。君すまないが、ご主人の様子を見てくれ。なんだか、おかしなあんばいなんだ」
これは唯事でないと感じたので、あとからきた書生は、いきなり主人の部屋のドアをノックして、ソッとそれをひらいてみた。
「おい、ベッドは空っぽだぜ」