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あんこくせい

暗黒星

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页

青空文庫

そしてその昏睡中の伊志田氏を地下室に担ぎ込み、目醒めぬあいだに、壁に縛りつけてしまったものに違いない。

彼は仕合わせにも、まだ水責めの陰謀には気づいていなかったので、それほどの恐怖は感じなかったが、しかし、眼の前に娘の綾子が、同じように縛られているのを見ながら、助けてやることも、声をかけることさえできない苦しさを、目醒めてから今まで、七、八時間も味わわされたのであった。

「一郎はどうしているのでしょう。あれもどうかされたのじゃありませんか。なぜここへきてくれないのでしょう」

伊志田氏は一と通り問答がすんだあとで、キョロキョロとあたりを見まわしながら、気遣わしげに訊ねた。

「いや、一郎君には別状ありません。御安心ください。ちょっと僕が行って呼んできましょう」

明智はなにげなく答えて立ち上ると、そのまま部屋を出て、一郎の寝室へ急いだ。

一郎の部屋の前には、三島刑事が腕組みをして立っていたが、明智を見ると、腑に落ちぬ様子で声をかけた。

「まだ寝つづけているんですよ。どうしたんでしょう。いくら疲れているといっても、少し変じゃありませんか」

「いや、心配したことはないでしょう。