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あんこくせい

暗黒星

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页

青空文庫

これは怖い話だ。すぐそばまで近づいていても、まったく眼に見えない星、夜、空を見ていて、そういう星を考えるとゾーッとすることがある。小さいと言っても、やはり独立の星なんだから、地球に接近すれば、空全体を蔽ってしまうほどの体積を持っているに違いない。

僕は今度の事件を考えていて、ふとその暗黒星の話を思い出した。今度の犯人は、つい眼の前にいるようで、正体が掴めない。まったく光を持たない星、いわば邪悪の星だね。だから、僕は心のうちで、この事件の犯人を、暗黒星と名づけていたのだよ」

「で、その暗黒星は何者だとおっしゃるのですか」

明智のもどかしい話し方を、我慢ができないというように、一郎青年がどなった。美しい顔が腹立たしそうにパッと赤らんでいた。

「君が考えている通りさ」

「えっ、僕が考えている?」

「ウン、君が一ばんよく知っていると思うんだ。君自身のことだからね」

「えっ、それじゃ。やっぱり先生は、僕が犯人だと……」

「何か異議があるのかい」

明智は少しも声の調子を変えないで言った。

論争

「ハハハハハ、何をおっしゃるのです。もしそれが冗談でないとしたら、先生はきょうはどうかなすっているのですよ。