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あんこくせい

暗黒星

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页

青空文庫

そういうお城の中の、一ばん広い客間に、五、六人の人影が、声もなく腰かけていた。電燈は消えて、まっ暗な闇の中に、それらの人影はほとんど身動きもせず、じっと静まり返っていた。

「兄さま、どうなすったの? 早くしなくちゃあ……」

闇の中から可愛らしい少女の声が、叱るような調子で響いた。

「ウン、すぐだよ。なんだか今夜は器械がいうことを聞かないんだ。よしっ、さあはじめるよ」

若々しくやさしい男の声が答えたかと思うと、突然ジーンとモーターの回転する音がして、カタカタカタと歯車が鳴り出した。そして、部屋の一方の壁が一間四方ほどボーッと薄明かるくなって、そこに人の姿がうごめきはじめた。

十六ミリの映写がはじまったのだ。なんでもないことなのだ。しかし、それが果たしてなんでもない映画鑑賞として終ったかどうか。その夜は何かしら家族の人たちを脅えさせるようなものが、その部屋の闇の中にたちこめていた。

十六ミリのフィルムには伊志田家の家族の人たちが写っていた。広い庭の樹立を背景にして、余りはっきりしない人影が、五十歳ほどのでっぷりしたひげのある紳士や、その夫人らしい人や、二十二、三の美しい令嬢や、十六、七歳の可愛らしい女子学生や、腰の二つに折れたようになったひどい年寄りのお婆さんなどが、まるで幽霊のように、暗い樹立の前を妙にノロ