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あんこくせい

暗黒星

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页

青空文庫

見ていると、一秒もたたぬうちに又ボーッと光り出した。そして、光っては消え、消えては光り、まるで、その円塔の壁に、巨大な蛍がとまって息づいているような感じであった。

「懐中電燈のようだね」

「ええ、僕もそう思うのです」

二人は円塔から眼を離さず、必要以上に声を低めて囁きかわした。

円塔の内部は久しく使用せず、荒れるにまかせてあった。その廃墟のような建物の中に、何者かが潜んでいるのだ。

「誰かが、ああして外部の者と秘密の通信をしているのじゃないでしょうか」

「ウン、そうかもしれない」

「このあいだ、家捜しをした時には、あの塔の中もむろん調べたのでしょうね」

「調べたのだよ。別に異状はなかった。人の隠れているようなけはいは少しもなかった」

しかし、今は確かに人がいるのだ。あいつかもしれない。黒覆面の中から眼ばかりを光らせているあの怪物かもしれない。

「待っていたまえ、ソッと塔へ行って調べてみよう」

明智の有本医師はあわただしく囁いて立ち上がり、壁のベルのボタンを押した。

「先生、大丈夫ですか。僕、なんだか心配です」

一郎青年はベッドの上に半ば起き上がって、青ざめた顔で名探偵を見上げながら、引き止めたいように両手をさし出すのであった。