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あんこくせい
暗黒星
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页
だが、この考えが正しいとすると、実に意外な人物を犯人として疑わねばならないのだ。その壁の穴に人知れずそういう仕掛けをすることができるものは、前後の事情から判断して、鞠子の隣室を居間としている綾子――被害者の実の姉の綾子――のほかになかったからである。
一郎は論理の筋道をたどって行って、結局わが姉の綾子を疑わねばならぬ窮地に立った。彼はさすがにそれと名ざして言うことはできなかったけれど、その恐ろしい結論をもたらして、敬慕する明智探偵の判断を仰ごうとしたのである。
一郎の美しい顔は今にも泣き出しそうにゆがんでいた。日頃から青白い顔がひとしお青ざめて、病人のように見えた。
「で、君はその人を真犯人と疑っているのだね」
ベッドの明智が思いやり深く、静かな声で訊ねた。
「僕は信じられないのです。しかし、あらゆる可能性を排除して行って、あとに残ったたった一つの結論がこれなのです。僕の推理が間違っているのでしょうか。できるならば、先生にその間違いを指摘していただきたいのです」
一郎は恐ろしいほど真剣な表情であった。
「僕は君が考えているほど、決定的だとは思っていない。