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きゅうこんさんじゅうし

求婚三銃士

佐々木 邦

「講談倶樂部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年10月~1935(昭和10)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,326 字 · 330 页

青空文庫

「何て?」

「玄関を探しましたけれど、見つかりませんから」

「分らない人ね。何てお答えしたの?」

「私は存じませんが、奥さまがお気づきになって仕舞ってお置きになったかも知れませんからって」

「馬鹿な人ね。私、知りませんよ、そんなもの」

「こゝか橋本さんで落したに相違ないように女中さんが言うものですから」

「橋本さんへも訊きに上りましたの?」

「これから上ると言っていました。橋本さんへ伺って帰りにこゝへお寄りになった丈けですから、何方かに相違ないと奥さんが仰有っているそうでございます」

「迷惑千万ですわ、そんな責任を負わせられては」

と大谷夫人は早速丸尾家へ説明に出掛ける積りだったが、もう時刻が時刻だった。間もなく御主人と安達君が夫れ/″\銀行と会社から帰って来た。

火事泥

夕食の卓上、二千円のダイヤが屈託になった。大谷さんは奥さんの訴えに耳傾けて、むずかしい顔をしていた。何うも丸尾夫人の為めに問題ばかり起る。

「好い迷惑だね。家にあるように思われたんじゃ」

「私、これから伺って参りますわ」

「何を伺いに?」

「いゝえ、一寸上って、説明して参ります」

「お前が行くには及ばない。