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いきにんぎょう
活人形
泉 鏡花
「探偵小説第十一集 活人形」春陽堂、1893(明治26)年5月3日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,111 字 · 82 页
膚の色真白く、透通るほど清らかにて、顔は太く蒼みて見ゆ。ただ屹としたる品格ありて眼の光凄まじく、頬の肉落ち頤細りて薄衣の上より肩の骨の、いたいたしげに顕われたるは世に在る人とは思われず。強き光に打たれなば、消えもやせんと見えけるが、今泰助等を見たりし時、物をも言わで莞爾と白歯を見せて笑める様は、身の毛も弥立つばかりなり。
人々ものを言いかくれど、答は無くて、ただにこにこと笑うを見て、始め泰助は近隣の狂女ならんと見て取りつ、問えばさるものは無しという。今もなお懐中せる今朝の写真に心附けば、憔れ果ててその面影は無けれども、気ばかり肖たる処あり。さては下枝のいかにしてか脱け出でて来しものにはあらずや。日夜折檻をせらるると聞けば、責苦にや疲れけん、呼吸も苦しげに見ゆるぞかし。こはこのままに去し難しと、泰助は亭主に打向い、「どこか閑静な処へ寝さして、まあまあ気を落着かしてやるが可い。当家へ入って来たのも、何かの縁であろうからと、勧むれば、亭主は気の好き男にて、一議も無く承引なし、「向側の行当の部屋は、窓の外がすぐ墓原なので、お客がございませんから、幽霊でさえなけりゃ、それへ連れて行って介抱してつかわしましょう。