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いきにんぎょう

活人形

泉 鏡花

「探偵小説第十一集 活人形」春陽堂、1893(明治26)年5月3日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,111 字 · 82 页

青空文庫

三 一寸手懸

今朝はちと快気なるに、警察を尋ねて見ばやと、宿を出づれば後より一人跟け来る男あり。忘れもせぬ其奴こそ、得三に使わるる八蔵という悪僕なれば、害心もあらんかと、用心に用心して、この病院の裏手まで来りしに、思えば運の尽なりけん。にわかに劇しく腹の痛みて、立ってもいられず大地に僵れ、苦しんでいる処へ誰やらん水を持来りて、呑ましてくるる者のあり。眼も眩み夢中にてただ一呼吸に呑干しつ、やや人心地になりたれば、介抱せし人を見るに、別人ならぬ悪僕なり。はっと思うに毒や利きけむ、心身たちまち悩乱して、腸絞る苦しさにさては毒をば飲まされたり。かの探偵に逢うまでは、束の間欲しき玉の緒を、繋ぎ止めたや繋ぎ止めたやと絶入る心を激まして、幸いここが病院なれば、一心に駈け込みし。その後は存ぜずと、呼吸つきあえず物語りぬ。

三 一寸手懸

泰助は目をしばたたき、「薄命な御方だ、御心配なさるな。請合ってきっと助けてあげます。と真実面に顕るれば、病人は張詰めたる気も弛みて、がっくりと弱り行きしが、頻に袂を指さすにぞ、泰助は耳に口、「何です、え、何ぞあるのですか。「下枝の写真。「むむ、それはこれでしょう。