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いきにんぎょう

活人形

泉 鏡花

「探偵小説第十一集 活人形」春陽堂、1893(明治26)年5月3日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,111 字 · 82 页

青空文庫

十五 火に入る虫

得右衛門立停って四辺を見廻し、「皆待ったり。この家はどうやら、例の妖物屋敷らしいが、はてな。して見るとあの婦人も化生のものであったか知らん。道理で来てから帰るまで変なことずくめ、しかし幽霊でも己が一廉の世話をしてやったから、空とは思うまい。何のせいだかあの婦人は、心から可愛うて不便でならぬ。今じゃ知己だから恐しいとも思わぬわい。おい、おらあ、一番表へ廻って見て来るから、一所に来い。といえども一人として応ずる者無し。「そんなら待っていろ、どれ、幽霊に逢うて来ましょ。と得右衛門ただ一人、板塀を廻って見えずなりぬ。

四人の壮佼は、後に残りて、口さえもよう利かれず。早夜は更けて、夏とはいえど、風冷々と身に染みて、戦慄と寒気のさすほどに、酔さえ醒めて茫然と金時は破垣に依懸り、眠気つきたる身体の重量に、竹はめっきと折れたりけり。そりゃこそ出たぞ、と驚き慌て、得右衛門も待ち合えず、命からがら遁帰りぬ。

十五 火に入る虫

短銃の筒口に濃き煙の立つと同時に泰助が魂消る末期の絶叫、第三発は命中せり。

渠は立竦みになりてぶるぶると震えたるが、鮮血たらたらと頬に流れつ、抱きたるお藤をどうと投落して、屏風のごとく倒れたり。