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いきにんぎょう
活人形
泉 鏡花
「探偵小説第十一集 活人形」春陽堂、1893(明治26)年5月3日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,111 字 · 82 页
七 籠の囮
人情なればこの婦人を勦りてやる筈なれど、大犯罪人前にあり、これ忽にすべからずと、泰助は急ぎ身支度して、雪の下へと出行きぬ。赤城の下男八蔵は、墓原に来て突当の部屋の前に、呼吸を殺していたりしが、他の者は皆立去りて、怪しと思う婦人のみ居残りたる様子なれば、倒れたる墓石を押し寄せて、その上に乗りて伸び上り、窓の戸を細う開きて差覗けば、かの婦人は此方を向きて横様に枕したれば、顔も姿もよく見えたり。「やあ! と驚きの余り八蔵は、思わず声を立てけるにぞ、婦人は少し枕を上げて、窓をあおぎ見たる時、八蔵ぬっと顔差出し、拳に婦人を掴む真似して、「汝、これだぞ、と睨めつくれば、連理引きに引かれたらむように、婦人は跳ね起きて打戦き、諸袖に顔を隠し、俯伏になりて、「あれえ。」
七 籠の囮
倉瀬泰助は旅店を出でて、雪の下への道すがら、一叢樹立の茂りたる林の中へ行懸りぬ。月いと清うさしいでて、葉裏を透して照らすにぞ、偶然思い付く頬の三日月、また露れはせざるかと、懐中鏡を取出せば、きらりと輝く照魔鏡に怪しき人影映りけるにぞ、はっと鏡を取落せり。
とたんに鉄棒空に躍って頭を目懸けて曳! と下す。