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いきにんぎょう
活人形
泉 鏡花
「探偵小説第十一集 活人形」春陽堂、1893(明治26)年5月3日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,111 字 · 82 页
手を替え、品を替え、撫つ抓りつして口説いても応と言わないが、東京へ行懸けに、梁に釣して死ぬ様な目に逢わせて置いたから、ちっとは応えたろう。それに本間の死んだことも聞かしてやったら、十に九つはこっちの物だ。どうやら探偵が嗅ぎ附けたらしい。何もかも今夜中に仕上げざなるめえ。その代り翌日ッから御大尽だ。どれ、ちょびと隠妾の顔を見て慰もうか。とかねてより下枝を幽閉せる、座敷牢へ赴くとて、廻廊に廻り出でて、欄干に凭りかかれば、ここはこれ赤城家第一の高楼にて、屈曲縦横の往来を由井が浜まで見通しの、鎌倉半面は眼下にあり。
山の端に月の出汐見るともなく、比企が谷の森の方を眺むれば、目も遥かなる畦道に、朦朧として婦人あり。黒髪颯と夜風に乱して白き衣服を着けたるが、月明りにて画けるごとく、南をさして歩むがごとし。
得三は呀と驚き、「あれはたしかに下枝の姿だ……いや、いや、三年以来、あの堅固な牢の内へぶちこんであるものを、まさか魔術を使いはしめえし、戸外へ脱けて出る道理が無い。こりゃ心の迷いだ。脱がしてはならぬ脱がしてはならぬと思ってるからだ。こればかりの事に神経を悩すとは、ええ、意気地の無い事だ。