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いきにんぎょう

活人形

泉 鏡花

「探偵小説第十一集 活人形」春陽堂、1893(明治26)年5月3日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,111 字 · 82 页

青空文庫

二 系図

ああいうのですから、病人の意にお任せなさい。病人はまた、「そうして他の人に聞かしとうございませんから、恐入りますが先生はどうぞあちらへ。……とありければ、医師は本意無げに室の外に立出でけり。

二 系図

病人は苦痛を忍びて語り出だしぬ。

我は小田原の生にて本間次三郎という者。幼少の折父母を失いければ、鎌倉なる赤城家に嫁ぎたる叔母の許にて養われぬ。仮の叔父なる赤城の主人は大酒のために身を損いて、その後病死したりしかば、一族同姓の得三といえるが、家事万端の後見せり。

叔母には下枝、藤とて美しき二人の娘あり。我とは従兄妹同士にていずれも年紀は我より少し。多くの腰元に斉眉かれて、荒き風にも当らぬ花なり。我は食客の身なれども、叔母の光を身に受けて何不自由無く暮せしに、叔母はさる頃病気に懸り、一時に吐血してその夕敢なく逝りぬ。今より想えば得三が毒殺なせしものなるべし。さる悪人とはその頃には少しも思いがけざりき。

されば巨万の財産を挙げて娘の所有となし、姉の下枝に我を娶わせ後日家を譲るよう、叔母はくれぐれ遺言せしが、我等の年紀の少かりければ、得三は旧のまま一家を支配して、己が随意にぞ振舞いける。