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いきにんぎょう
活人形
泉 鏡花
「探偵小説第十一集 活人形」春陽堂、1893(明治26)年5月3日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,111 字 · 82 页
得右衛門は得三の名を呼びて室外におびき出し、泰助は難無く室内に入りて潜むを得たり。しかる後二人計略合期して泰助をして奇功を奏せしめたる、この処得右衛門大出来というべし。被を被替えて虚兵を張り、人形を身代にして下枝を隠し、二度毒刃を外して三度目に、得三が親仁を追懸け出でて、老婆に出逢い、一条の物語に少しく隙の取れたるにぞ、いでこの時と泰助は、下枝を抱きて易々と庭口に立出づれば、得右衛門待受けて、彼はお藤を背に荷い、これは下枝を肩に懸けて、滑川にぞ引揚げける。
時正に東天紅。
暗号一発捕吏を整え、倉瀬泰助疾駆して雪の下に到り見れば、老婆録は得三が乱心の手に屠られて、血に染みて死しいたり。更に進んで二階に上れば、得三は自殺して、人形の前に伏しいたり。
旭の光輝に照らされたる、人形の瞳は玲瓏と人を射て、右眼、得三の死体を見て瞑するがごとく、左眼泰助を迎えて謝するがごとし。五体の玉は乱刃に砕けず左の肩わずかに微傷の痕あり。
明治二十六(一八九三)年五月