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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

探偵小説は伊達に書いているのではないぞこの野郎と、僕はムラムラと癪にさわった。しかしそれはいい傾向とはいえなかった。「黄谷青二」がどうやら完全に浅間信十郎を征服してしまって、なにかまた大怪我をしでかしそうであった。――

果然、僕はポケットから小型の懐中電灯を取出すが早いか、サッと第三の男の身体を照らした。

「あッ――」

「あッ――」

向うとこっちと、同時に叫び声をあげた。向うはこっちの懐中電灯に驚いたのであることは疑いない。こっちが驚いたのは、怪我をしているといった第三の男が、実は、もう死にきっていることだった。顔色はすっかり青ざめ、唇の色も変り、大きな口をだらりと開き、両眼は白目を剥きだし、呼吸をしていなかった。誰が見ても一と目で、これは死んでいるなと鑑定することが出来た。その上、向うには気の毒なことだったが、このとき第三の男の身体がゴトンと下についた拍子に、身体がすこし傾いだ。そして左の背中にピカリと光るものが見えた。それは驚いたことに、相当深く肉に喰いこんでいるらしい刃物だった。多分短刀でもあろう。

ハッとして、僕は後へ飛びのいた。しかしそれはもう間に合わなかった。