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しんやのしちょう

深夜の市長

海野 十三

「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页

青空文庫

「どこかやられたんですか。――強盗ですか、殺人ですか」

といって遠慮なく覗いてみると、その舁がれている第三の人物は、二人とは違って、僕と同じようにオーヴァを着込んだ洋服姿の男だった。年のころは三十四、五かと思うが、すこし骨ばってはいるがそこらにザラに転がっているような至極特徴のない顔をしていた。

二人のインバネス男は、互いに顔を見合わせたが、そのうちの一人が、

「ええ、こいつ友達だんね。だいぶ酔うとりましてな、足がフラフラで、いまそこの溝に足をつっこんで、ひっくりかえりましてん。怪我しとりますが、医者がどこにあるやら分らしめへんねン。貴方さん、えろう済みまへんが、ちょっと医者らしい家を見つけくんなはらしめへんか。……」

と関西弁でもってベラベラと喋った。

「ああ、溝へおっこって怪我をしたんですか。……」

僕は肚の中で、声を立てて笑った。そんなことで誰が欺されるものか。あのキャーッという悲鳴が溝へ落ちた悲鳴かそうでないかぐらいは、ちょっと考えてみれば見分けのつくことだった。しかも二人の連れがいながら、僕だけを医者の家を探すために走らせようというのが腑に落ちなかった。